フィクション小説– category –
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フィクション小説
第一部 忘れられない記号 二 さよならを言えた人(後編)
翌年三月。 桜の蕾がほころび始めた頃、祖父は病室の窓から桜を見た。病院の中庭に、一本の染井吉野があった。三分咲き。 「咲いたな」 祖父はそう言って、笑った。ノートの最後の項目に、チェックを入れた。万年筆のインクが少しかすれた。 その三... -
フィクション小説
第一部 忘れられない記号 二 さよならを言えた人(前編)
【海斗|2000/12/23 Sat|Snow|病室】 海斗が小学四年生の冬のことだ。 2000年12月23日。天皇誕生日。土曜日。 病院の廊下は、消毒液の匂いがした。海斗はその匂いが嫌いだった。鼻の奥がツンとする。母親と二人で歩く廊下の先に、祖父の病室がある... -
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第一部 忘れられない記号 一 さよならを言えなかった人(後編)
葬儀には行かなかった。 「ご家族だけで」と先生が言ったから。それを理由にした。本当は、行けなかった。行く勇気がなかった。 大輝も行かなかった。美咲も。クラスメイトのほとんどが行かなかった。 田村先生だけが行った。 夏休みが続いた。 ... -
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第一部 忘れられない記号 一 さよならを言えなかった人(前編)
【海斗|2010/07/23 Fri|Sunny|自宅】 海斗が陽菜の死を知ったのは、陽菜が死んだ翌日の朝だった。 2010年7月23日、金曜日。夏休みの三日目。 枕元で携帯電話が震えた。ガラケーのバイブレーション音。布団の中で片目を開ける。時計は7時42分。夏... -
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ろんぐろんぐあごー─ 星の雨は、記憶の中に ─
プロローグ 名前の半分 【海斗|2030/07/07 Sun|Rain|プラネタリウム準備室】 午後3時。 相沢海斗の指先に、紙の端がある。 焦げた封筒。宛名の半分が、炭に食われて消えている。 相沢く その先は、黒い。焦げ跡の境界は不規則で、「く」の...
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